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2022年01月29日 14:49
こんにちは、ENGI MAG編集部です!
筆者は多くの爬虫類や両生類を飼育しているため、初めて爬虫類を飼おうと思っている人から「爬虫類って、飼うの難しいんですか?」という質問をよく受けます。
“爬虫類”と一言で言ってもトカゲもいればワニもいますし、「種類もたくさんいるので難しいかどうかは人次第です」と言えてしまうのですが、そう言ってしまうと元も子もないので真摯に答えようと思うものの、やっぱり言い方が難しい。
個人的には手間はハムスターとそこまで変わらないと思うのですが、爬虫類の場合必須となる周辺器具がいくつかあります。
さらに言うと、昼行性トカゲと夜行性トカゲでも必要となる器具が少し異なるのですが、今回は昼行性トカゲを飼う場合の「これさえあれば大丈夫!」という飼育セットを、なぜそれが必要なのかという理由と併せてご紹介いたしますので、昼行性トカゲを飼うことが難しいかどうかの判断基準にしていただければと思います!
目次
必要な器具をご紹介する前に、「なぜ昼行性トカゲにこの器具が必要なのか」という理由を知っていただくため、まずは昼行性トカゲ類の生態について解説したいと思います。
昼行性トカゲの基本的な生活リズムは、朝起きてすぐの日光浴から始まります。
この日光浴には体温を上げる目的と、紫外線を浴びる目的があるのですが、それぞれの役割についてはこの後詳しくお話ししますね。
日光浴で限界まで体温を高めた後、昼行性トカゲは素早く敵から身を隠しつつ、虫などの獲物を探して食べます。
ある程度食べると、物陰に入って体温を少し下げつつ、食べたものを消化するために一休み。
これを何度か繰り返し、日没時には完全に身を隠して眠ります。
それではなぜ日光浴で体温を上げる必要があるかについてですが、トカゲは周りの温度によって体温が変化するいわゆる変温動物なので、自分で熱を作り出すことができず、日光浴で体温を上げないと満足に動けないことが理由です。
ちなみに私たち人間を含めた哺乳類や鳥類は、代謝熱を出すことで体温を一定に保つことができる恒温動物ですが、動物には様々な体温制御のパターンがあるとわかってきた結果、二分化できると誤解を招く可能性があるとして、学術的には「恒温動物」と「変温動物」という分け方で呼ばれることはなくなっているそう。
次になぜ日光浴で紫外線を浴びる必要があるかというと、爬虫類は骨を作るために紫外線を必要としているのが理由です。(爬虫類に限らず人間などもそうですが)
もう少し詳しくお話しますと、骨は広く知られている通りカルシウムから作られますが、カルシウム自体は吸収されにくい栄養素であるため、実際には吸収を促すビタミンD3が必要なのです。
このビタミンD3を含むビタミンDは、別名「サンシャインビタミン」とも呼ばれる栄養素で、日光浴による紫外線で化学反応が起きることで、体内でも合成されます。
ビタミンD3は一部の食べ物にも含まれるため、昆虫食や肉食、もしくは雑食のトカゲであれば、餌からビタミンD3を摂取できることもありますが、草食トカゲの場合は餌から摂るだけでは不十分。
飼育下の場合、最近ではビタミンD3が含まれた爬虫類・両生類用のカルシウム粉末なども売られていて手軽に摂取できるようにはなっているものの、日光浴や紫外線ライトの使用・併用を前提としていて、最低限の量になっていることも少なくありません。
そのため、飼育下で仮にビタミンD3入りカルシウム粉末を使用したとしても、足りないビタミンD3を補うために紫外線が必要、つまり日光浴が必要、というわけです。
爬虫類や両生類にビタミンD3やカルシウムが不足すると、くる病、栄養性二次性上皮小体機能亢進症、骨軟化症などといった代謝性骨疾患(MBD)になることがあります。
逆に、カルシウムやビタミンD3過多になると、過剰症や腎臓疾患を引き起こす可能性があるため、ビタミンD3入りのカルシウム粉末を使用する場合はあげすぎに注意が必要です。
だいたいのトカゲの生活リズムがわかったところで、これを飼育に落とし込んで考えてみましょう。
こちらが我が家でのセッティング例で、幅60cmほどのケージで、15cmくらいのトカゲを2匹飼っています。
ここからは、具体的な器具類を挙げて解説していきますね。
当然ながら、絶対に必要です。
昼行性トカゲを飼うなら、爬虫類用のガラスケージを用意しましょう。
このあと紹介しますが、昼行性トカゲを飼う場合は紫外線ライトを使うことになり、プラスチックは紫外線で劣化してしまうため、ガラスケージが必要です。
また、ほとんどのトカゲは頭上から何かをされるのが嫌いなので、側面に扉がついている爬虫類専用ケージが最適です。
パネルヒーターは、「最低限の温度を保つために必要なもの」と考えるといいでしょう。
自然界でいえば、夜間の最低温度を再現するためのものです。
最近ではほとんどが「遠赤外線タイプ」になっていて、ヒーターによってガラス面などを温めることでケージ内の温度を保つ仕組みになっています。
地表性の種を飼う場合はケージ下面に、樹上性の種を飼う場合はケージ側面に貼るといいでしょう。
英語で日光浴のことを「バスキング(basking)」といいます。
「バスキング」は爬虫類の世界ではよく使われる言葉で、バスキングに用いるライトなので、バスキングライトです。
これは、トカゲが体温を上げるためのライトになるので、高温になるものを使います。
ショップに行けば専用のランプが売っていますが、一般用のレフランプなどでも代用できます。
▼レフ電球
▼ライトのソケット
触るとやけどするほど熱いので、ケージの外側から照射するようにし、飼い主も触らないように注意しましょう。
爬虫類が骨を作るために必要な、紫外線を照射する特殊なライトです。
▼紫外線ライト(こちらはLEDタイプではありません)
▼UVBライトカバー
前は蛍光灯タイプしかありませんでしたが、最近ではメタルハライドと呼ばれる水銀灯タイプや、LEDタイプも発売されています。
蛍光灯タイプの場合、紫外線を出すのは使用後半年くらいなので、こまめに交換しましょう。
また、一部の商品を除いて紫外線ライトはほとんど熱を出さないので、バスキングライトの代わりにはなりません(逆も同じです)。
最低限必要な器具としては、ここまで紹介してきたもので揃っています。
あとは床材や水入れ、レイアウトなどになりますが、これは飼う種類によって大きく違うため、是非当サイト内の生き物・ペットカテゴリーや、サイト内検索をご利用いただければと思います。
ヒョウモントカゲモドキやアオジタトカゲ、フトアゴヒゲトカゲなど、色々な種類の爬虫類・両生類をご紹介しています。
話を戻して、こうして揃えた器具をどうセッティングするかについても、簡単に解説しておきましょう。
最初にご紹介したトカゲの生活サイクルの話に戻りますが、彼らの多くは一日の中で何度も体温を変化させています。
つまり、ケージの中に温度差が必要だということです。
なんとなく、ケージ内を均一に一定の温度にしなければいけない気がするかもしれませんが、逆に体調を崩してしまうことさえあります。
ケージ内に温度差を作り出すため、ヒーター類は片側に寄せて、温度の高い場所と低い場所を作りましょう。
パネルヒーターはケージ全面を覆う大きさではなく、大きくても半面程度の大きさにします。
どのくらいの温度差にするかについてもトカゲの種類によって違うのですが、低いところで28℃くらい、高いところ(バスキングスポット)で40℃くらいをイメージしておくといいでしょう。
暖かい地域であるため、東南アジア産の樹上性種では割と均一に暖かい方が良い場合が多いのですが、砂漠性の種ではもっと極端な温度差が必要になることもあります。
このあたりは、自分が飼いたい種類の生態や飼い方を良く調べてからセッティングするようにしましょう。
ずらっと列挙した器具類を見て「めんどくさいな」と思った方、正解です(笑)
これだけのものを買ってくるのですから当然お金もかかりますし、冒頭の質問「爬虫類を飼うのは難しいのか?」はやはり人によって捉え方が変わってくるかなと思います。
ただ、昼行性トカゲの仲間はもっともトカゲらしいトカゲのグループで、個性豊かで魅力的な種がたくさんいます。
ちょっと頑張って器具をそろえてみる価値はあると思いますよ!
それではまた。
執筆・一部写真提供:GJ
編集・一部画像作成:端希(はしき/Twitter・Instagram)