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2022年02月24日 02:12
こんにちは、ENGI MAG編集部です!
「ヤモリ」と聞いて、日本人なら真っ先に思い浮かべるのが、夜の窓ガラスや壁に張り付くニホンヤモリの姿ではないでしょうか。
日本人にとっては身近な爬虫類でありながら、なんとなく「謎の生き物」のようなミステリアスな雰囲気をもっていますが、実は国産爬虫類の中でもかなり飼いやすい種でもありますので、今回はそんなニホンヤモリの生体や、「ヤモリ」という名前の由来、ガラスに張り付ける理由、実際の飼い方などについて詳しく解説いたします!
目次
ヤモリ(Gekko japonicus)はもともと、日本列島には生息しておらず、古い時代に外国の船に紛れ込んで日本に侵入、定着したとされています。
元々日本にいるヤモリの仲間はニホンヤモリのみとされていましたが、現在では四国などにいるタワヤモリと、鹿児島県の屋久島にいるヤクヤモリ、九州南部以南にいるミナミヤモリも生息するとされています。
ニホンヤモリは秋田以北など一部地域には生息していませんが、日本では広く見られる爬虫類で、「家守」というだけあって、民家やその周辺に多く生息しており、森などにいることはほとんどありません。
平均10年程度と、小さな身体ながら長寿命です。
丁寧に飼育した場合10年以上生きることもありますので、飼育する場合はご自身の環境なども考慮する必要があります。
平均10cm程度で、最大でも14cm程度とそこまで大きなサイズになることはありません。
ニホンヤモリは卵生で、粘着質に覆われた約1cm程度の卵を1度に2個ずつ木や壁面などに産みつけます。
抱卵したヤモリは裏側からお腹を見ると、うっすらと卵が見えるのでわかりやすいです。
卵は1ヶ月半〜2ヶ月程度で孵化し、4cm程度の赤ちゃんが生まれ、半年〜1年程度で大人と同じサイズまで成長します。
「ヤモリ」という名前は日本語です。
では、漢字で書くとどうなるか、ご存知ですか?
家守?それとも屋守?
実はどちらも正解で、どちらも間違いです。
「ヤモリ」という日本語読みの由来自体は、害虫を食べて家を守ってくれるから「家守(もしくは「屋守」)」と呼ばれ幸運の象徴ともなっているのですが、実は本来ヤモリは「守宮」と書きます。
そのまま「しゅきゅう」とも読む漢字ですが、守宮で「ヤモリ」と読む、というと頭をひねらせますよね。
この「守宮」という名前の由来には、大きく分けて2つの説があります。
古代中国では、お腹が赤くなるまで朱砂(水銀)を飲ませたヤモリを陰干しし、すりつぶした粉を女性の身体につけると洗っても一生消えない色がつくものの、男性と交わるとたちまちその色が消えると考えられていて、いわゆる浮気防止でヤモリが使われていたそうです。
これは「験淫術」と呼ばれるものですが、後宮(皇后や妃などが住むところ)の宮女の貞操を守らせるために使われたため、「守宮」と書かれるようになった、というのが1つ目の説。
ただし、現在の中国では「壁虎」という呼び方の方が一般的なようです。
ヤモリは夜行性で、人家の外壁に潜み、夜になると窓明かりに集まる虫を食べに出てくる性質があります。
しかし、かつての日本の家は、夜にさほど明るくなることはありませんでした。
夜中でも煌々と明かりが灯っていたのは、祈祷が行われるような神社仏閣がほとんどだったはずです。
このため、ヤモリは神社仏閣に好んで生息するようになりました。
この姿から、「お宮を守る」という意味で「守宮」と書くようになり、「家守」も「屋守」も、各家庭の窓明かりが明るくなった近代になってからつけられた当て字、というのが2つ目の説です。
ニホンヤモリといえば、壁やガラス面などの垂直面に張り付く姿が有名です。
長い間、「足の裏が吸盤のようになっているのでは?」「足の裏が鈎(かぎ)のようになっていて凹凸に引っかかっているのでは?」などと考えられてきましたが、実はそうではありません。
どうしてニホンヤモリは、ほとんど凹凸のないガラス面やプラスチック面にも張り付くことができるのでしょうか。
ヤモリの足は人間と同じ5本指。
そんなヤモリの足の裏をよく観察すると、趾下薄板(しかはくばん)と呼ばれる細かなヒダがあるのがわかると思います。
このヒダの一本一本にはさらに約650万本ものナノメートルサイズの細かな毛が生えていて、この目に見えないほど細かい毛と、ガラスなどにある目に見えないくらい細かな凹凸が接近することで、分子間がくっつく「ファンデルワールス力」という力が働き、一種の結合状態になっていると、2000年に解明されたそうです。
つまりひっかかったりしているのではなく、文字通りくっついているということ。
そのため、一見ツルツルに見えるガラス面でも張り付くことができるのです。
ちなみに、凹凸が一切ないくらいにちゃんと掃除して磨き上げたガラス面には、うまく張り付けない場合もあります。
ニホンヤモリは先述の通り、全長10cm程度と大きくなく、夜行性のためさほど活動的ではありません。
これらの特徴から、実はニホンヤモリは非常に飼いやすい国産トカゲ類となっています。
大きくなっても10cm程度で不活発ということは、かなり小型のケージでも飼育できるということです。
そして、夜行性ということは日光浴をしないので、高温のバスキングライトも紫外線ライトも不要です。
国産種ですから、基本的には保温もいりません。
つまり、小さなプラケースがあればそのまま飼育できてしまう生き物なのです。
同じトカゲ類で比べてみても、ニホンカナヘビとニホントカゲ、ヒガシニホントカゲでは紫外線ライトやバスキングライトが不可欠であることを考えれば、そのお手軽さが伝わると思います。
では、そんなニホンヤモリの飼い方をご紹介します。
もっとも手軽に飼うのなら、100円ショップで売られている一番小さいサイズのプラケースが使えます。
ニホンヤモリを1匹だけ飼うのなら、このサイズのプラケースで十分です。
ちなみに、複数飼育も可能ですが、なるべく単独で飼った方がトラブルなく飼うことができます。
また、同じ大きさのプラケースが2つあると、メンテナンスがぐっと楽になります。
プラケースの底には、キッチンペーパーや新聞紙を敷きます。
少しでも自然っぽい雰囲気で飼いたいのならヤシガラ土やバークチップでも大丈夫です。
床材に隠れることはありませんし、基本的な生活の場は床材以外の場所なので、厚さも薄めでかまいません。
床材についてはこちらの記事でもまとめています。
寒さが苦手なので、18〜28℃程度で温度を保ちましょう。
人がちょっと涼しいと思うくらいの室温なら特に保温しなくても大丈夫ですが、寒い場合はパネルヒーターを使用します。
また、脱皮不全になる可能性があるため、ある程度の湿度を保つ必要がありますが、毎日霧吹きをしていれば湿度計までは不要です。
あとは隠れ家として、プラケースに入る大きさの流木などを入れます。
こちらも自然素材でなければいけないわけではなく、トイレットペーパーの芯などでも代用できます。
ただし、紙素材は痛むのが早いので、定期的に交換してやりましょう。
これで、ケージのセッティングは完了です。
写真は我が家で飼っているヤシヤモリのベビーですが、セッティングは同じです。
また、この個体の大きさがちょうどニホンヤモリくらいなので、サイズ感の参考になると思います。
餌は基本的に生きた昆虫です。
ヨーロッパイエコオロギのMサイズくらいが妥当で、これより大きいと食べられないかもしれません。
3日に一度、食べるだけ食べさせますが、大きな生き物ではないので2匹ほど食べれば十分だと思います。
また、すぐにピンセットから食べるようになるので、冷凍コオロギやグラブパイに餌付けるのも簡単です。
ニホンヤモリは樹上性で、溜まった水を認識しないことが多いため、水入れから水を飲むことはほとんどありません。
また、泳ぐこともできるので水に濡れても問題ないものの、体温が奪われてしまうため、基本的に水入れは不要です。
代わりに、1日1回ケージの壁などにさっと霧吹きで水を与えましょう。
朝昼でも大丈夫ですが、夜行性の動物なのでできれば夜にしてあげたほうが親切です。
意外と早くケージ内が汚れてくるので、フンが目立ってきたら掃除をします。
あらかじめ用意した同じ大きさのプラケースに床材を敷き、ヤモリが張り付いている隠れ家ごとさっと移動させましょう。
素早くやれば、ヤモリが気づく前に移動させることができます。
その後はそのまま移動させた方のケージで飼い、古い方のケージはしっかり掃除して、次のメンテナンスに備えます。
こうして、メンテナンスの際にケージをスイッチするようにすれば、手間もかかりませんし脱走のリスクを減らすことができます。
意外と飼育が難しかったり、手間のかかるものが多い国産爬虫類にあって、例外的に初心者さんでも安心して飼えるのがニホンヤモリです。
ショップで売られていることが少ない分、野外で見つけて捕まえられるかどうかがポイントです。
もしも見つけたら、頑張って捕まえてみてくださいね。
それではまた!
執筆・一部写真提供:GJ
編集・一部画像作成:端希(はしき/Twitter・Instagram)