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2022年01月17日 20:04
こんにちはENGI MAG編集部です!
「爬虫類」と聞くと、ヘビやトカゲを連想し、「恐い」「気持ち悪い」といった苦手意識を持つ方も少なくありません。
(筆者含め、爬虫類マニアからすると全ての爬虫類がかわいくて愛おしいのですが 笑)
しかし、そんな爬虫類の中でも別格の扱いを受けている種類がいます。
それが、カメの仲間です。
特にリクガメは見た目がかわいいためネガティブな声が聞かれないくらいの人気者で、「ペットとして飼いたい」という人も多いようです。
というわけで今回は、人気のリクガメの中でも初めてリクガメを飼う人に特にオススメしたい、ヘルマンリクガメをご紹介いたします!
目次
リクガメと聞くとなんとなく熱帯の乾燥地に棲息しているイメージがあるかもしれませんが、ヘルマンリクガメ(Testudo hermanni)はヨーロッパに棲息するリクガメです。
ヘルマンリクガメはニシヘルマンリクガメ、ヒガシヘルマンリクガメに加え、ヒガシヘルマンリクガメから分離されたダルマティアヘルマンリクガメの3種に分かれていて、いずれの種類も寿命は概ね30〜最長50年程度ですが、それぞれ見た目やサイズなど少しずつ特徴が違います。
ヘルマンリクガメの基亜種(亜種の基となる種)であるニシヘルマンリクガメ(Western Hermann’s tortoise/Eurotestudo hermanni hermanni Gmelin)は、平均18cm、最大では20cm程度と、次に紹介するヒガシヘルマンリクガメよりも一回り小さく、甲羅は全体的に黒っぽいのが特徴です。
ヘルマンリクガメの最大種がヒガシヘルマンリクガメ(Eastern Hermann’s tortoise/Eurotestudo hermanni boettgeri)で、平均30cm、最大では35cm程度にもなるとされています。
ただし、飼育下でそこまで育つことは稀で、多くがニシヘルマンリクガメとそこまで変わらない大きさで成長が止まります。
甲羅の色はやや黄色がかった褐色で黒い部分が少なく、黄色と黒の差がはっきりしていないのが特徴です。
ヘルマンリクガメの最小種がダルマティアヘルマンリクガメ(Eurotestudo hermanni hercegovinensis)で、平均15cm、最大でも18cm程度とされています。
珍しい種なのでお写真はありませんが、ヒガシヘルマンリクガメから分離された亜種であるため、見た目はヒガシヘルマンリクガメに近く、頭部に明るいまだら模様が入る場合が多いのが特徴です。
ペットショップで流通しているのはほとんどがヒガシヘルマンリクガメとニシヘルマンリクガメで、ダルマティアヘルマンリクガメを見かけることはまずありません。
ヘルマンリクガメの値段はニシヘルマンリクガメで3〜4万円程度、ヒガシヘルマンリクガメで2〜4万円程度、ほとんど流通はありませんが、ダルマティアヘルマンリクガメは3〜5万円程度であることが多いです。
個体のサイズなどにより値段が異なり、ベビーの場合は少し安く購入できる場合があります。
ヘルマンリクガメがオススメできる理由の前に、そもそもリクガメがペットとしてオススメできるかどうか、少しだけ解説しますね。
結論から言うと、リクガメはあまりペット向きの生き物ではありません。
飼いきれないくらいの大型種や飼育難易度が高い種がいること、そして寿命が長いことがその理由です。
そんなリクガメの中でも比較的飼いやすく初心者の方にもオススメされるのが、ロシアリクガメ、ギリシャリクガメ、そしてヘルマンリクガメです。
確かにこの3種はわりと飼いやすいのですが、ロシアリクガメ(ホルスフィールドリクガメ/ヨツユビリクガメ/Testudo horsfieldii)は以前よりも見かける機会が少なくなり、やや入手が難しいかもしれません。
ギリシャリクガメ(Testudo graeca)は確かに飼いやすく、見かける機会の多い種で、私も現在飼っているのですが、実は「ギリシャリクガメ」と呼ばれるカメの中に10種類以上の別種が混ざっています。
種類が違えば産地も違うわけで、中には一般的なギリシャリクガメの飼育法ではうまく飼えないものも混ざっています。
最近はきちんと区別されて売られていることも多いのですが、飼いにくい種類のギリシャリクガメを買ってしまうリスクを考えると、あまりオススメはできません。
一方ヘルマンリクガメは流通する個体のすべてが「CB個体」と言われるブリーダーが繁殖させた個体なので(上記写真は野生のヘルマンリクガメですが)、人に飼育されることに慣れており、温度や環境に神経質、ということがありません。
大きさも手ごろで持て余すことはないですし、個体差はあるものの甲羅に模様があるので、好みの個体を選ぶこともできます。
ただし、リクガメの中でも飼育しやすいヘルマンリクガメであっても30年以上生きることも多いので、飼い始める時は長く付き合う覚悟を決めましょう。
当然、飼われる方ご自身の年齢によっては、次に大切に飼ってくださる方が見つからない場合、オススメできかねます。
ヘルマンリクガメは乾燥にも低温にもそれなりに強いリクガメですが、逆にじめじめした環境では体調を崩してしまいます。
ある程度の高さがあれば逃げ出すことはないので、爬虫類用のケージではなくコンテナやプラ舟で飼育するのがオススメです。
写真は私が飼っているギリシャリクガメの様子ですが、幅60cmほどのプラ舟で飼育しています。
ヘルマンリクガメも同じようにして飼うことができます。
底面がツルツルだとカメが歩きにくく、やがて足が変形し歩行障害を起こすので、ウッドチップなどを敷いてやりましょう。
私はホームセンターで売っていた、もみ殻を敷いています。
ただし、こうした柔らかい床材を敷くと爪が伸びすぎてしまうので、定期的に爪切りで切ってやります。
最初は獣医さんにお手本を見せてもらうといいでしょう。
ヘルマンリクガメの飼育に適している温度は26度〜30度で低温に弱いため、ケージの底面にはパネルヒーターを敷きます。
パネルヒーターはケージ全体の1/3くらいの面積があればいいでしょう。
乾燥にも強いヘルマンリクガメですが、湿度は概ね60%前後(50〜70%くらい)が適しています。
湿度計を用意し、適した湿度になるよう床材を霧吹きなどで湿らせてあげます。
このようなものであれば、温度も湿度も管理できて便利です。
日中、特に体温を上げたいタイミングで日光浴ができるよう、スポットライトも設置します。
ライト直下が35℃くらいになるようにしましょう。
紫外線も浴びないと骨の形成異常や甲羅の変形を起こすので、爬虫類用の紫外線ライトを照射します。
他のリクガメ同様、ヘルマンリクガメの餌は基本的に野菜などの植物です。
一種類だけの野菜を与えるのではなく、なるべくいろいろな野菜を混ぜて与えます。
私の場合、小松菜を主食に、その日に冷蔵庫にある野菜を組み合わせて与えています。
毎日でなければ、果物を与えるのもいいでしょう。
餌には爬虫類用のカルシウム剤をふりかけ、足りないカルシウムを補います。
リクガメ用の人工フードも売られていますが、たんぱく質が多いためヘルマンリクガメには不向きです。
餌の野菜から水分を補給するため、基本的には水入れはなくてもかまいませんが、水浴びをしたり水の中で糞をすることが多いため、ヘルマンリクガメが入れるサイズの水入れを用意してあげるとベストです。
リクガメは視力が良く、空間認識能力も高いため、物の位置関係や人の顔などをすぐに覚えます。
餌が欲しいと近寄って来たり、初めて見たものをしげしげと観察してみたりと、飼ってみると本当にたくさんの表情を見せてくれます。
寿命が長いため気軽に飼うべき生き物ではありませんが、長く相棒として付き合うのにはピッタリでしょう。
それではまた!
執筆・一部写真提供:GJ