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2022年01月20日 11:31
こんにちはENGI MAG編集部です!
身近な爬虫類の代表格ともいえるのが、ニホンカナヘビ、いわゆるカナヘビです。
実は、多くの人がトカゲと呼んでいるものの大部分がカナヘビだったりします。
日本中に広く分布しているので、子どものころに公園などで捕まえて遊んだ思い出のある方もいるでしょうし、お子さまが捕まえてくる、ということもあるでしょう。
もちろん、大人が見てもじゅうぶん魅力たっぷりな生き物です。
というわけで今回は、カナヘビとはどういった生き物なのかや、カナヘビの種類、カナヘビの上手な飼い方などについて詳しくご紹介いたします!
目次
そもそも、カナヘビという名前が不思議ですよね。どう見てもトカゲですが、名前にはヘビとついています。
カナヘビは名前こそヘビとなっていますが、立派なトカゲの一種です。
カナヘビ(金蛇)という名前の由来には諸説ありますが、「金物色(かなものいろ)をしたヘビのようなトカゲ」もしくは「可愛らしいヘビ=愛蛇(かなへび )」(※「可愛らしい」を古語では「愛し(かなし)」と言います)などの説が有力です。
「ヘビっぽいから」という理由だけであればストレートに「カナトカゲ」でも良さそうなものですが、わざわざ「ヘビ」が使われているのにも理由があり、それはかつて日本ではトカゲのことを「ヘビノジ(蛇の爺・父)」と呼ぶ風習があったことに由来します。
要するにトカゲはヘビの祖先というような考え方があったんですね。
手足のあるトカゲの方が祖先というのも進化論的な側面で言えば不思議に思われるかもしれませんが、これは蛇が神様という信仰があることが理由で、長くなるため今回は割愛します。
というわけで、諸説あるものの「金物色をした(もしくは可愛らしい)ヘビノジ」が略されて「カナヘビ」となった、というのが有力な名前の由来と言えそうです。
カナヘビの種類や個体によってそれぞれ生体は異なりますが、名前に「ヘビ」とつくだけあって体形は細長く、尻尾は全長の2/3ほどもあります。
ニホンカナヘビに限って言えばちょっとした緑地があれば棲息していることが多く、公園や庭先、学校の校庭でも見かける機会も多いかと思います。
全長は20cmを超えることもありますが、尻尾が長いので全長の割にそれほど大きく感じないことも多いです。
日本にいるカナヘビの寿命はいずれの種類も概ね5〜7年程度とされていますが、飼育下で丁寧に育てられた場合で最長10年程度生きることもあるようです。
コモチカナヘビなど卵胎生(卵を体内で孵化させ子供を産むこと)である一部のカナヘビを除き、カナヘビは卵生で、卵を産みます。
種類によりますが、1度に2個以上を年に何回かに分けて産むことが多く、ニホンカナヘビの場合一度に2〜7個程度の卵を産み、1年程度で成体(大人)になります。
実はカナヘビは種類が多く、世界中に何種類もカナヘビの仲間が分布しています。
今回は日本にいるカナヘビに限って種類をご紹介しますが、海外の有名ドコロだと鮮やかな青色をしたフォルメンテーラカベカナヘビや、最大80cmにもなる大型のホウセキカナヘビなどが有名です。
日本でよく見かけるのはニホンカナヘビという種類です。
大きさは全長16〜27cm程度で、飼育下でも繁殖しやすいトカゲです。
日本でよく見られるのはニホンカナヘビですが、世界のトカゲ類の中で最も分布が多いのがこのコモチカナヘビ。
日本のコモチカナヘビは北海道の一部地域に生息しています。
大きさは全長14〜18cm程度で、「コモチ(子持ち)」という名前の通り、トカゲには珍しく卵を体内で孵化させ子供を産む「卵胎生(らんたいせい)」のトカゲです。(ただし、暖かい地域では卵を産むこともあるそう)
名前の通り、宮古諸島に分布するのがミヤコカナヘビ。
大きさは全長16〜22cm程度の細身のトカゲで、鮮やかな緑をしています。
絶滅の恐れがあるため、平成30年度より飼育下の繁殖が行われています。
アムールカナヘビ pic.twitter.com/g2i6BDyRs9
— おーちゃん【鬼】 (@Ohchan_ch) June 4, 2020
アムールカナヘビは、日本では長崎県の対馬だけに生息する臆病な性格のカナヘビです。
大きさは全長22〜26cm程度で、準絶滅危惧種に指定されています。
アオカナヘビ pic.twitter.com/XY8iAfovkt
— おーちゃん【鬼】 (@Ohchan_ch) September 4, 2021
体色の鮮やかな緑が特徴のアオカナヘビは、ニホンカナヘビに比べてやや口先が長く面長。
大きさは全長20〜28cm程度で、奄美群島、沖縄諸島、小宝島、宝島に住む準絶滅危惧種のカナヘビです。
沖縄の石垣島や小浜島などに分布しており、大きさは26〜30cm程度と、日本に分布するカナヘビの中では最大種。
こちらも絶滅の恐れがあるカナヘビです。
鮮やかな黄緑色の体色が特徴の樹上性トカゲですが、まれに地面に降りることもあるようです。
飼い方の説明に行く前に、カナヘビの捕まえ方について少し触れておきます。
動きは素早いのですが、捕まえられないほどではありません。
狙い目は、暖かい季節の午前中、日光浴している最中の個体。まだ体温が上がりきっておらず、本気のダッシュができないはずです。
ゆっくりとカナヘビに近づき、そうっと手を出します。
カナヘビの頭を手で優しく包み込むように、一気に押さえましょう。
カナヘビの方が人間よりも反応が早いので、頭を狙えばちょうど胴体を押さえられるはず。
捕まえたら虫かごなどに入れて持ち帰ります。
手で捕まえる自信がない方は、虫取り網などをサッと被せて、優しく胴体をつまんで虫かごに入れるのも良いと思います。
また、カナヘビは尻尾を捕まえると自切(尻尾を自ら切って逃げること)してしまいます。
自切は生涯で一度しかできないダメージが残る反射運動(自分の意志とは関係なく起こる運動)なので、必ず胴体を押さえるようにしましょう。
見た目も可愛らしく、見かける機会が多いので飼ってみたくなる方も多いと思いますが、カナヘビをきちんと飼うにはそれなりの設備が必要です。
外国産の昼行性トカゲを飼うのと同じ覚悟で臨みましょう。
まずはケージですが、それほど大きくなくていいので、爬虫類用のガラスケージを使用します。
1~2匹飼うだけなら、30cm四方のケージで十分飼育できるでしょう。
ケージはスライドドアではなく、観音開きになるタイプのものを使用します。
カナヘビの頭は半分くらいの厚みに押しつぶすことができるので、スライドドアタイプのケージだと、隙間から脱走されてしまいます。
底面にはヤシガラ土などの土系の床材を敷きましょう。赤玉土やソイルでも構いません。
ポイントとして、数cmの厚みになるよう敷くようにしましょう。
半樹上性と言われるくらい、木登りなど立体活動を好むので、ケージ内には登れるようなレイアウトを組んでやります。
鉢ごとでいいので、できれば観葉植物も入れてやりましょう。
水をよく飲むので、必ず水入れを設置します。
あまり深いと溺れてしまうので浅い容器を使いますが、浅い容器ではすぐに水が干からびてしまいます。
水がちゃんと入っているか、毎日確認しましょう。
生息する場所や種類にもよりますが、カナヘビに適した温度は24度〜27度であるため、ケージの側面にはパネルヒーターを貼り、暖かい場所を作ります。
そして、スポットライトをつけて、特に温度の高い場所、スポットライトは当たらないけれどパネルヒーターは当たるそこそこ暖かい場所、ヒーター類が何もない涼しい場所と、温度の違う場所を何か所か作り、カナヘビが選べるようにします。
スポットライトとは別に紫外線ライトも必要です。
カナヘビは紫外線を浴びないと、正常に骨を作ることができず、歩行障害や背骨の変形を起こしてしまいます。
湿度が下がりすぎるとうまく脱皮できない場合があるので、ケージの隅からそっと水を流し込み、床材の下半分が黒っぽく湿って、表面が白っぽく乾いた状態(湿度50〜60%程度)を維持します。
餌は口に入る大きさの昆虫で、基本的にはコオロギを使うことになります。
成虫では大きすぎて食べられないので、SサイズやMサイズと呼ばれる幼虫を与えましょう。
ピンセットから食べるようになれば、冷凍したコオロギでも解凍して与えられるようになります。
コオロギにはカルシウム剤をふりかけてから与えましょう。
飢えに弱いので、最低でも2日おき、できれば毎日与えます。
ここまで読んでいただいた方ならお分かりかと思いますが、カナヘビはとても、お手軽に飼育できる生き物ではありません。
きちんとケージをセッティングし、こまめに餌を与えないと、上手に飼えない生き物です。
観葉植物などでしっかりとレイアウトしたケージで飼うと、驚くほど見ごたえがあり飼っていて楽しいのですが、そこまでする気がないのなら、飼わないほうが賢明です。
身近な生き物イコール飼いやすいわけではない、という好例といえるでしょう。
ただ、技術的な難しさがあるわけではなく、あくまでもちゃんとした設備が必要というだけなので、そこまで難しいわけではありません。
小型で可愛らしい印象の強いカナヘビですが、よく見ると鱗はごつごつしていて、「小さな恐竜」と呼ばれることもあるくらい、精かんな顔つきをしています。
飼育にはそれなりの設備が必要ですが、きちんと飼う覚悟ができたら、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
それではまた!
執筆・一部写真提供:GJ